ご挨拶

2019年1月18日
産婦人科PRP研究会代表世話人
山王病院院長
堤 治

 

 体外受精・胚移植を中心とする生殖医療はこの40年で急速に拡がり、日本では年間5万4千人が誕生し、国内で生まれる18人に1人を占めます。体外受精児の数や体外受精で生まれる割合は世界で一番ですが、残念ながら体外受精治療(採卵)当たりの妊娠率は世界の中では低いほうです。

 治療成績が上がらない原因はいくつかあります。年齢が高い方が治療を受ける割合が高く、難治性不妊と言われ、何度も治療し繰り返し胚を移植してもなかなか妊娠しない方が少なくありません。治療を続ける患者さんに対して生殖医療に携わる者は大きなジレンマを感じています。

 PRP療法と聞いてもなじみが薄いと思います。2018年シーズン途中アメリカ大リーグで活躍する大谷翔平投手が肘を痛め、救急的に治療を受けてマウンドに復活した治療法が、PRP療法でした。自分の血小板からでてくる物質を利用して細胞組織の再生を図る治療法として注目されはじめています。

 PRP療法が子宮内膜を厚くし、着床率を高めるのではないかというレポートが世界各地から散見されはじめ、日本では初めて山王病院を中心に難治性不妊の患者さん治療にPRP療法を加える臨床研究を昨年開始しました。最終報告を準備している段階ですが、予想をはるかに超える良い成績を得て、その一部は2018年12月2日のフォーラム「夫婦で歩む不妊治療」の中で紹介されました。

 フォーラムをきっかけに不妊治療で苦労されている患者さんの中にはPRP療法に関心を持ち、治療を希望される方も日本中に大勢おられることと推察されます。「産婦人科PRP研究会」の設立は、患者さんおよび生殖医療に関心のある方、さらに生殖医療に携わる方々にもPRP療法を正しく知ってもらうことを一つの目標にしています。

 PRP療法は再生医療に位置づけられ、実施にあたっては、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」を順守し、事前に十分な審査を受け、最終的に厚生労働省から認可を受ける必要があります。新たに一から取り組むのは時間と労力の無駄になるので、山王病院の実施要領に準拠し、共同プロトコールで全国どこでも安定したPRP療法を可能にするのが本会設立の大きなミッションであります。

 現在、臨床研究の段階は終了し、実地臨床は準備段階であります。本ホームページの役員や会則、会員所属施設等をご覧いただけば、全国ほぼ一律のPRP療法のプロトコール・治療要領で、実施準備が進んでいることをご理解頂けると思います。新規に開始を希望される施設にはサポートしてまいります。まだまだPRP療法の評価は定まっておりませんが、本研究会では臨床成績をまとめ、予後調査もおこない、成果を世界に発信していく所存です。